むかご日記

@霞ヶ関。2021年-2023年フランス留学(エクス・アン・プロヴァンス政治学院→パリ政治学院)

【前編】フランス大学院留学 留学先を選ぶ

フランスの大学院(修士1年)留学にあたって、出願先大学院を検討中のため、記録を残しておこうと思う(2020年8月末時点)。

この記事では、Grands Ecolesの位置づけなどフランスの高等教育制度については省略し、公共政策分野のフランス大学院留学にあたって実際に検討した学校/コースの概要をまとめる。

 

0.前提条件

・一般職(ノンキャリ)国家公務員。業務に必要な能力・知識を涵養するための留学。

・留学期間は2年。

・現在フランス語TCF B2、英語IELTS 6.5。

・留学先国の選択肢はフランスのみ。

 

1.Science Po(政治学院)、ENA(フランス行政学院)など概要

フランスで公共政策分野の修士号を取得しようと思うと選択肢は限られてくる。代表はGrands Ecolesのひとつ、Science Po(政治学院)。パリの政治学院がもっとも有名で、単にScience Poというとパリ政治学院を指すが、その他の都市にも計10のScience Poがあり、どこも留学生向けのコースを設けている。ちなみに、パリ政治学院はQS大学ランキング2021のPolitics分野では世界第2位だが、全体としてみると242位に留まっている。フランスやEU内での知名度は高いが世界的な評価は低い。

これは、academic reputation や論文引用のスコアが低いことからもわかるように、研究機関というより教育機関の側面が強いためである。

www.topuniversities.com

その他の選択肢としては、経済系などの大学の公共政策コース。例えば、元パリ第9大学のParis Dophineは経済系のGrands Ecoleだが、公共政策コースもある。

dauphine.psl.eu

各学校のHPを見る限り、Science Po Paris 以外は、基本的に語学要件を満たして必要書類をそろえれば留学を拒否されることはなさそう(詳しくは後編で)。

 

さらに、ハードルはぐっと上がるが、大学で公共政策、法学、経済学などを履修済みで語学力にも自信があれば、フランス随一のエリート官僚養成学校、フランス行政学院(ENA)のCycle international long(CIL)コースも選択肢に入るかもしれない。日本人としては、古田岐阜県知事や、片山さつき参議院議員(日本人女性として初)が留学している。

www.ena.fr

・フランス以外の公務員であること

・Master1あるいは同等の学位

・フランス語と英語が堪能なこと

など要求水準は厳しく、さらにENA独自の入学試験をパスする必要がある。これを突破すると、将来フランスおよびEUの行政を担うフランス人学生や、帰国すれば各国の政治・行政の第一線で活躍する留学生たちと一緒に8か月間学ぶことができる。ENAに留学することは日本の国家公務員といえど困難で、1年に1名いるかいないか。

なお、CILコース入学者選抜試験通過者は上にリンクを張ったページで公表されており、2020年は日本人2名を含む32名が合格している。また、CILコースを終了した学生向けに、ENAでの2年目のコースの提供もある。

 

2.留学生向けコース概要

各学校が準備する留学生向けコースは、基本的にM1またはM1前段階に相当する。もちろんM1で学ぶ内容を履修済みであれば、M2に入学することも可能だが、HPの「留学生向け」ページで案内されているものはM1コースになる。

学校ごとに、留学生向けの様々なコースが用意されている。

まず、フランス語で公共政策を学びたい留学生向けのコースとして、CEP(Certificat d'etude politique)がある。Lyon、Bordeauxなど複数のScience Poに設置されており、1年間、必修・選択科目を規程単位履修することが義務付けられている。CEPコースを修了すると、Certificat d'etude politique(政治学修了書)を取得できる。授業はすべてフランス語で、言語要件はフランス語B2以上。

もちろん、多くの場合、英語のみで修了可能なコースも提供されている。例えば、Sience Po Paris の留学生向けコースは、1年コース、2年コース、いずれもほぼすべて英語のみとなっている。Sience Po Strasbourgでは、フランス語初心者にむけた英語のみのCES(Certificate of European Studies)コースの提供がある。その他の学校でも、留学生に対してフランス語を絶対要件とするところは少なく、英語又はフランス語を求める場合が多い。

交換留学以外の枠組みで留学を希望する者に向けた自由度の高いコースもある。例えば、Saint-Germain のScience Poではfree-moverという1年コースが提供されており、修了証などは発行されない代わりに自由に講座を履修することができる。

 

大学での専門が公共政策分野とは異なっていたり、語学力が足りない場合には、まず上記のコースでM1相当を修了し、次年度にM2コースに入学して修士号を取得、という流れになる。

 

各学校の特徴や出願要件については【後編】に続く。