むかご日記

@霞ヶ関。2021年-2023年フランス留学(エクス・アン・プロヴァンス政治学院→パリ政治学院)

渡仏97週目 帰国

6月25日から7月1日

f:id:mukago3:20230704090915j:image日本の家族へのお土産を買ったり、荷造りを進めて不要なものは処分したり、掃除をしたりして帰国準備。

帰国後の所属部署も通知されていよいよ仕事が現実として向かってくる。

パリを歩いていて、スミレやバラの砂糖漬けを、ベルガモットジェラートを、フェーブ・ドゥ・トンカのアイスを見つけ、彼女のことを思い出しながら口にする。

帰国と職場復帰によりパリから切り離されるのは良かったのかもしれない。ずっと彼女との記憶と繋がった土地で生活し続けるのはつらい。

帰りのフライトでは観たい映画もなくひたすらタブレットで漫画を読んだり、留学の記録をつけていた。

渡仏96週目 モンペリエ、母来る

6月19日から25日

f:id:mukago3:20230627035228j:image帰国を前に、友人に挨拶をしにモンペリエへ行った。彼女ももう70代半ばで、まだ駅まで車で迎えに来てくれるくらいには元気だけど今度いつ会えるかはわからないなあとお互いに思いながら、それでも口に出すのは次に会う約束。私が日本に行く、ううん、私がフランスに来る。

f:id:mukago3:20230627035420j:imageパリに戻ったら、日本からやって来る母を迎えにシャルルドゴール空港まで。荷物がなかなか出てこなかったようで着陸から1時間も待った。時差ぼけで毎日早起きの彼女に付き合って散歩をする。旅行先でwi-fiを使う準備をしてきておらず、一緒でないと家から一歩も出られない模様。馴染みのレストランに連れて行ったり、子供服を買ったりする。

f:id:mukago3:20230627035457j:image連日外食をするのは過剰だというので、デパートでスモークサーモンだのミニハンバーガーだのシャルキュトリーだのを買って、おつまみのような食事を摂る。前もって買っておいたメロンはよく熟れて甘かった。

渡仏95週目 もう会えない彼女

6月12日から18日

クラス全グループの修士プロジェクトの口頭試問が終わった日、SOSを受けて彼女のアパートに向かった。

彼女とは、パリに来てから共通の友人の紹介で知り合って、特にここ数ヶ月はよく会った。旅行もした。

会うだけでなくメッセージのやり取りも頻繁にしていた。

私は連絡不精なので毎日テキストを送り合うような相手はほとんどいない。でも彼女にはあやういところがあって、連絡を途切れさせるのが心配だった。もちろんそれだけでなく、劇やオペラの感想を報告しあったり、次に会うときの計画を立てたりするのは楽しかったし、ちょっとしたこと-修士プロジェクトの愚痴だの、果実酒を漬けただの、パンジーの種を植えてみただの、その芽が出ただの-を共有するのがいつの間にか日常になっていた。

メッセージを送ると数時間以内には既読がついて返事が来るのが常だった。それなのにそのときは随分経っても既読がつかなかった。おかしいなと思いながらも彼女の家の正確な住所も知らないし、忙しい時期でもあり、その日すぐには何もしなかった。ただ他愛ないメッセージをポツポツ送った。

そしてその日、共通の友人から、彼女とメッセージをやり取りしているが様子がおかしい気がすると連絡を受けて、住所を聞き、パリの賑やかな界隈にひっそりとあるアパートへ向かった。向かっているその途中、もうすでに彼女には会えなくなっていることを知った。それでもアパートに行く。

クラスのWhatsAppグループは賑やか。なんと言っても今日で全てが終わり盛大にパーティーを開くのだから。おつかれさま!ワインを買ったよ。今日は文句言いっこなしがルール!破ったらショットだよ。今向かってるところ。何階だっけ?

どうすれば良いのかわからない。すべきことは分かっている。この留学の最終報告書を仕上げて、アパートを引き払う手続きを進め、日本へのお土産を買い、荷造りをする。今後中長期のキャリアやプライベートについて考えをまとめて根回しをする。そう、なるべく早いうちに南米かアフリカで働きたい、そのためにすべきこと。

それに、彼女に渡したくて買っていたものは誰かほかに譲る先を見つけないといけない。彼女に報告したいことがたくさんある。LINEもメッセンジャーも開けば彼女のアカウントがずっとそこにある。私は連絡不精だからなかなか流れていかない。何度開いても既読はつかない。

渡仏94週目 修士プロジェクトレポート提出

6月5日から11日

月曜日、修士プロジェクトのレポート提出日。

最後までグループ間では色々揉め事あり力技で押し込めたりしていたけど、締切を(大幅に)過ぎることなく提出。調整がうまくいかず最後まで手をつけられなかったパートは目を逸らしたいほどの低クオリティだけど、それでも提出!メンバーの子たちが互いにレポートの出来を自信満々に誉めあって、成果物として出版したい、就活に使いたい、などと言っているのを聞くとあまりの認識の落差にため息だけど、提出することが大事!

この半年のプロジェクトを通してチームマネジメントの大切さをしみじみ実感。とはいえ仕事なら上下関係と責任分担範囲がある程度明確だし、受注発注関係なら仕様を明確にすることである程度解決できるよね。

やっぱりこういった中期的な研究をフラットなチームで行うのは無理があるのでは?というのが正直な感想。メンバーに恵まれれば計画的に手分けして高水準の研究ができるかもしれないけれど、1ヶ月でやっつければいいや、誰かが指示してくれることだけやればいいや、卒業に必要だからページ数さえ埋まればそれでいいや、なんなら剽窃とChatGPTでなんとかしよう、なんていうメンバーが集まると本当に辛い。

そんなもやもやを晴らすべく夜は友だちとバーへ。

f:id:mukago3:20230612061421j:image普段は立ち入らないようなピシッとしたホテルの奥へ進んで、不法侵入しているような気持ちになりながら一杯。

翌日からは口頭試問の準備。久々に真面目にパワポを作ったり、ありうる質問をひたすら書き出して答えを準備したり。

その合間に、先日の旅行で買ったけれど開けていなかったりんごのお酒カルバドスに苺や桃をお砂糖と一緒に漬けて果実酒を作る。カルバドスは熟成させていない珍しいものを見つけたから買ってみたんだけど、そのままでは酒精が強すぎて飲めそうになかったので苦肉の策。おいしくなーれ。

スーパーには果物がたくさん並び良い季節。帰国までの3週間はメロン、桃、苺にさくらんぼ三昧だ。

渡仏93週目 課題も大詰め

5月29日から6月4日

修士プロジェクトのレポート提出締め切りを1週間後に控えてようやくグループワークが進んできた、と思いきや、週末にがんばったら疲れたから休憩日を作ろうーなどと相変わらずのんびりムード。

これは提出日ぎりぎりになって慌てながら頑張るパターンだな、、と察知。提出締め切りの2日前には完成させて前日はデザインと最終チェックで進めるから!とのメンバーの言を、笑顔で受け流すだけの経験をした。

水木金の午前中は最後の夏期集中講義。公共政策と統計。

話は戻って修士プロジェクト、早めに進めたくて色々書いても最後にひっくり返されるということも学んだので、一人で焦っても仕方ないなと金曜の夜は19時くらいまで進めたあとは友だちと飲みにいく。

金曜夜で予約しなくても入れそうなところ、ミーハーにパリっぽい老舗のレストラン、どこかないかな、と無茶なリクエストを出したら、オペラ座近くのGrand Café Capucinesを提示してくれてそこへいくことに。結局ついたのは21時近かったこともあり、すんなり座れた。軽く食べたら、近くのHarry's (New York) Barに移動して飲み直す。グループワークのことを聞いてもらったりおしゃべりしたりしていたらあっという間に日付が変わる。

友だちはお酒に弱いのに今日は少し飲んでいて、ちゃんとメトロに乗れるかな?と少し心配になり別れた後にちらちらと振り返っていた。すると、ふと、黄色のベストを羽織って掃除をしているメトロ職員と目が合う。「そんなに気にして、彼女がどうかしたの?」「飲み慣れないのに今日はお酒にくちをつけていたから心配で。」「彼女が?」「そう、彼女が。」どうやら恋人と思われた。

土日はまたもや缶詰。もはや細かいところにこだわる時間はないというのにそれぞれの信念があるようで、なかなか全体が書き上がらない。小見出しにこだわって延々悩む子、なんでも手伝うよと言いながら細かい指示がないと何も書けず飽きてインスタを眺めている子、提出12時間前になって突然英語の言い回しに何十箇所と大量修正を入れてくる子。

進まないので日曜夜19時、一旦強制終了して各人を家に帰す。あとはオンラインで!

渡仏92週目 観劇乾杯監獄缶詰

5月22から28日

夏季集中講義を受けながら修士プロジェクトの追い込み。これまでもギスギスしていた人間関係がさらに険悪になり、学校のアカデミックアドバイザーも巻き込んで騒ぎが拡大。それでも提出期限は近づいてくる。

最終手段として週末はグループメンバーを家に呼んで(今の時期、土日祝は学校の図書館が閉まっていると言う事情もある)、この項目を書き終わるまでは今日は帰らないこと!と無理やり進める。土日月と、朝から夜11時まで缶詰して少しずつ形になってきた、かもしれない。

といっても毎日10何時間も集中できるはずもなく、メンバーの一人がプロダンサーでもあるので、突然彼女がインストラクターでストレッチ/ヨガレッスンがはじまったり。

気分転換に果物やおやつ、つまめるものを出したら一瞬でなくなって笑っちゃったり。

夜ご飯にパスタをどっさり茹でて出したら、翌日は自分の国のお菓子を持ってきてくれたり。

そういえば平日にはちょっと久しぶりに観劇。Christian Hecq演出「海底二十万浬」。数年前にコメディフランセーズのViex Colombierで上映していたもののリバイバル。この演出家、2022年のモリエール賞theatre public部門を町人貴族で総なめしていて、友達も絶賛していたので是非とも見に行きたかったんだ。

原作は当然よく知っているし、それが毒々しいフレンチユーモアと軽妙なセンスで賑やかに具現化されていて2時間弱楽しんだ。