むかご日記

@霞ヶ関。2021年-2023年フランス留学(エクス・アン・プロヴァンス政治学院→パリ政治学院)

渡仏61週目 プルーストのマドレーヌ

10月10〜16日

f:id:mukago3:20221018014753j:image月曜朝、起きるとマクロ経済の先生から中間テスト課題が届いていた。

問1 最近10年のイギリス経済について、GDP、失業率、生産性、経常収支などを用いて説明せよ。GDPの成長は問題か?その理由は?経常収支は問題か?その理由は?

問2 上記期間における金融政策(財政赤字、公債)を説明せよ。

問3 トラス首相が発表したmini-budget政策について端的に説明せよ。mini-bidgetへの賛成、反対意見を説明した上で、自分の判断を示せ。

これについて48時間でレポートを書いて提出しなくてはいけない。まずは各種データをIMFOECDから引っ張ってきてグラフを作り、授業ノートを見返しながら回答を作っていく。授業の合間を縫ってのレポート作成はなかなか大変だった。フィードバックをもらえるといいんだけど。経済学は、公務員試験の前に勉強したはずだけど、高校物理っぽかったイメージしか残っていない。こうやって、いろんな数値の意味と、それを用いてどのようにある国の経済状況を判断するか、どの数値をどう変化させることを目的とするか、そのためにはどんな手段があるか、っていうのは全く未知。授業についていくのも大変だったけど、このレポートもつらかった。

 

f:id:mukago3:20221018014824j:image水曜朝、げっそりしてレポートを提出したら、近所の本屋さんでノーベル賞を取ったアニー・エルノーの本を買う。本屋さんにいる間に私以外に二人もアニー・エルノーの本を探しにきた人がいた。ちなみに近所の本屋さん2軒はどちらも、自国からノーベル賞作家が出たというのに、分かりやすい特集コーナーを作っていなかった。fnacみたいにもっと商業的な本屋さんにいけば違うのか?カフェで1時間ほど読んで(それでも50ページも進まない)、午後は夜9時過ぎまでみっちり授業。

木曜は、昼間はあまり集中できないながら次の課題の下調べなど。夜はカルティエ・ラタンの小劇場へ。

f:id:mukago3:20221018014846j:imageプルーストの「失われた時を求めて」を題材にした独白劇。

www.theatredelacontrescarpe.fr

役者一人に、観客は30人もいないくらい。役者と観客という壁が、直接に語りかけられている感覚によって薄くなったり、また分厚くなったりする。「失われた時を求めて」は学生時代によく読んだので、長い作品でもやっぱりここ(冒頭、マドレーヌ、展覧会etc)は引用するよね、その箇所はそうやって声に出すんだ、など思っているうちに、当時の、文学部なんかに進んでしまったためにテクストを読むのが辛くなり、それでもひたすら読まざるを得なかった気持ちや、キャンパスの近くの一人暮らししていたアパートの景色が蘇ってきた。

金曜はグループワークの打ち合わせや軽めの授業。サクッと終わらせて課題を進める。

土曜、朝から学校の図書館で課題やプレゼンに向けた資料集めをしていたら、夕方になってクロワッサンを配る人が。何やら校舎でやっていた催し物での余りらしい。静かな図書館内、無言で妙に真剣な顔してクロワッサン山盛りのカゴを差し出して回っている。ありがたくひとつもらったら、パン屋さんのパリッパリで美味しいクロワッサンとは違い、しょなっとしている。懐かしい。そうそう、学校のカフェの安いクロワッサンってこんな感じ。

f:id:mukago3:20221018014912j:image日曜も日本時間の夜中近くまで課題に取り組んでいたら流石に疲れる。というか、月末にプレゼンがひとつあって(「機関ネットワークのパフォーマンス向上のためにデジタル技術をpôle emploi(仏版ハローワーク)へ導入するプログラムの提案」)それに向けて準備をしているんだけど、明らかに時間かけすぎ。pôle emploiの組織、予算獲得と執行の仕組みと実態、人員配置、業務内容、課題なんかの基礎知識を入手するだけで一苦労。つい仕事基準のリアリティとクオリティを出そうとしてしまっているが、必要ないのでは?

木曜の観劇が面白かったので、同じ劇場の他のプログラムにも興味が出てきた。エミール・ゾラドレフュス事件に関わるきっかけとなった夜についての作品を観てみたい。あと、古典も観に行きたい。今年はモリエール生誕400年らしく、作品をいろんな劇場で上演しているので、同じ作品を違う演出で見比べるのも良い。

f:id:mukago3:20221018014928j:imageパリはすっかり秋。