むかご日記

@霞ヶ関。2021年-2023年フランス留学(エクス・アン・プロヴァンス政治学院→パリ政治学院)

フランスの公務員制度ちら見

10月31日〜11月6日は1週間の秋休み。旅行はしないでパリに残る代わりに、毎日誰かと会ってご飯かお茶をしていた。そのなかの一人が選択授業で知り合ったパリ政治学院修士2年目のフランス人学生。少し話したときに聞いた年齢が妙に若くて経歴が気になり、その他にもパリ政治学院へのフランス人学生の見方、公務員事情など色々聞いてみたくてカフェに誘ってみた。

f:id:mukago3:20221106221509j:image彼は仏英の他に中国語が相当に流暢、日本語もかなりできる。スイス近くの小さな町で育って、高校で優秀な成績だったので、Grands Ecolesのための予備校(通称Prépas。普通、Grands Ecolesに進学するには最低2年はここで勉強しないといけないはず)も経ずに、筆記試験一部免除でパリ政治学院のル・アーブル分校に入学。

この時点で、パリ政治学院に入るのにPrépasって必須じゃなかったんだ!とか、入試は全員共通とも限らないんだ!という驚き。

ル・アーブル分校は、アジア政治の教授や授業が充実しているので選んだとのこと。修士からは分校含め全生徒がパリに集められるので、去年からパリに来た。パリではアジアに特化した授業がほとんどなくて、少しあるのも質がイマイチでつまらないらしい。外交官になりたいので、パリではル・アーブルでやらなかったことを補完するように勉強しているとのこと。

パリ政治学院は、日本でいう東大文一・文二か私立トップ校の法経みたいな存在で、一般的なフランス人に「パリ政治学院で勉強している」というと「すごい!フランスやヨーロッパでの就職には困らないね」と言われる。でも実際はそうでもなく、例えばパリ政治学院の中でもPSIA(国際関係学部)は、留学生はともかく生粋のフランス人学生の場合はそれなりの伝手がないと就職は難しいらしい。それに、専門性が薄いゆえに、公務員試験を受けるハードルもかなり高いとか。

彼に旧国立行政学院(ENA)・現国立公務学院(INSP)は受験しないのか聞いたら、旧ENAは自治体業務に携わるなど国内向けの側面が強くて、早く外交の現場に出たいから考えていないとのこと。ちなみに、ENAはフランスの官僚主義・エリート主義の象徴で、黄色いベスト運動で槍玉にあげられて閉鎖されたけど、名前が変わっただけで実態は変わらずINSPが引き継いでいる。

フランスの公務員試験は、省がそれぞれ独自に実施している。複数の省を受験するのも可能だけど、日程被りに注意。外務省の試験はまず筆記。1日5時間が複数日にわたって行われる。ある日は「外交とスポーツ」、次は「極東の海洋政策」、その次は。。。といった感じで、与えられたテーマから独自に問題設定をして論じる、フランス王道ど真ん中な試験。

この試験方式は高校から叩き込まれているとはいえ、各テーマについて5時間まるっと使って書き切るのは、体力も精神力もかなり削られると言っていた。希望すれば書いたものはコメント付きで返却してもらえるから、怖いけど申請する、とのこと。よかったら回答が返却されたら見せてとお願いした。フランス人学生のトップ層がどんなふうに何を書くのか興味がある。

筆記試験を突破したら次は面接。今は筆記の結果待ち状態とのこと。

公務員にはABCの3カテゴリーがあって、Aは政策、Bはロジや官房、Cは秘書や事務、という感じで職務が分かれているらしい。Bで働いている人がAの試験を受ける、ということも珍しくないのだとか。そしてAの中でも学生(社会人未経験者)枠、Bなどでの経験者枠に分かれている。ただし、分かれているはずが、今回Aの学生枠で受験したら周囲には経験者も多かったらしい。ちょっと愚痴っていた。

フランス人の学生と突っ込んだ話をする機会は少ないし、パリ政治学院事情や公務員事情はさらに希少なので質問し倒してしまった。他の人にも聞きたいところ。フランス人学生との間に勝手に壁を感じてないで、お茶にでも誘っていこう。