渡仏9週目の覚書 秋学期の折り返し
渡仏9週目 10月11〜17日
大学図書館の定位置はステンドグラスの隣の奥まった席。
9月6日の週から始まった授業はこれで5回目を迎え、半分が終わった。先生からはぽつぽつ試験やレポートの準備をしっかりするように、とアナウンスされる。
10月最後の週末までは夏時間なので、最近の日の出は7時50分くらい。8時からの一限がある日は暗いなか起き出して身支度をしていると家を出る少し前にようやく明るくなってくる。しばらく前から午前中の気温は一桁台で、朝はダウンジャケットを羽織っている人も多いくらい。午後1時を過ぎると20度近くまで上がり、日没の7時まで暖かいのでコートやジャケットを脱ぎ出す。日差しが強く日向にいると薄手の長袖でも汗ばむほど。
週末は友達に誘われて公園でカードゲーム。芝生に3時間座っていたらお尻が痛くなった。
先週と今週の読書はFrédéric Beigbeder「Nouvelles sous ecstasy」とEmilienne Maffatto「Que sur toi se lamente le Tigre」。Frédéric Beigbederはベルギーからの留学生と本の話をしていたら勧められたので読んでみた。ちょっと軽薄すぎるかなというのが感想。Emilienne Maffattoのは2021年のゴンクール処女小説賞作品だと帯に書いてあったので手に取ってみた。現代イラクを舞台に、ギリシア悲劇のように定められた結末に向かって容赦なく突き進んでいく作品。読んでよかった。
渡仏8週目の覚書 なまものを食べる
渡仏8週目、10月4日〜10日。
学校が始まってすぐのやる気が薄れてきた、そろそろ五月病かもしれない、寒さが拍車をかける。などと思っていたら木曜日、東京で震度5の地震があったとのニュースを見て心配する。家族には何もなかった(遅くまで残業していたので電車が復旧するまで駅で足止めされた以外は)とのことで少し安心。
金曜、気分を変えたくて家でなまものに挑戦。スーパーで牛肉のタルタルとニシンの燻製を買ってくる。牛肉のタルタルは生肉を叩いて食べるもの。レストランではよく食べるけど自宅では初めて。調味用のソース付き。ニシンの燻製はスモークサーモンと同じ扱いで並んでいた。まずはどちらも売られているそのままで食べてみた。それなりに美味しかったけど、味付けや付け合わせに工夫すればもっといい感じになりそうなのでこれからも試してみるつもり。
合わせたお酒は久しぶりのハイボール。
週末は家から歩いて30分くらいのまだ行ったことのなかった公園へ。小川沿いに小道が続き、所々は芝生の広場なんかもあって良い感じ。
何世紀のものか、噴水の名残がぽつねんとしていた。
渡仏7週目の覚書 かかりつけ医の登録、履修科目の登録
渡仏7週目 9月27日〜10月3日
ワクチン接種2回目から2週間が経つ頃を見計らって、フランスの病院予約サイトDoctolibでかかりつけ医登録のために予約を入れておいた。一度は予約がキャンセルになったので探し直して、街の中心からは少し離れるけど徒歩圏で近場(とはいえ1週間ちょっと先)で空いている病院を予約。初めて向かう地域だったので少し迷ったけど予約時間5分前に到着。朝早めの時間だったからかそんなに混んでおらず、5分くらい待ってすぐに診察へ。
今回の目的はかかりつけ医の登録(これをしないと保険適用率が下がる)をし、コンタクトレンズとピルの処方箋をもらうこと。無事にどちらもできて、渡仏以来少しずつ整えてきた生活基盤関係のことが、これで大体終わった。一安心。あとは税金関係だけど、それはまだしばらく先。
大学事務の中庭からの風景。
週の後半には履修科目の登録。まだ始まっていない授業もあるのに今後の履修科目変更は不可と言われて、理不尽だけど、とりあえず登録。今受講中のものと、10月から始まる講義と、11月から始まる講義をそれぞれ一つづつ。集中して取り組める科目数には限りがあるので、興味関心と相談しながら、負担の大きそうな科目はなるべく同時期にならないようにしてみた。
先週自然派ワインを買ったお店はしばらくバカンスでお休みになっていたので、スーパーでまとめ買いでお得になっていたロゼをジャケ買い。ロゼワインは大抵クセがなく何にでも合って美味しく飲める。ヤギのフレッシュチーズやタンドリーチキンなどと一緒に。
先週と今週の読書はJean-Baptiste Del Amo "Pornographia"とLaurent Mauvignier "Loin d'eux"。Pornographiaは語彙に馴染みがなさすぎて3/4くらいしか読めず。Loin d'euxはとても良かった。比較的平易な語彙で話し言葉のように書かれていながら緊張感で読み進めてしまう。
以下Institut françaisが推薦している未翻訳のフランス語文学リストの紹介文引用
「世代間でのコミュニケーションの断絶を描いたこの小説は、故郷を離れ、家族 «「あいつら」から遠く離れて»(タイトルの意)家を出る青年、リュックを描いた物語です。読者は読み進むうちに、彼がパリで給士のアルバイトを始めることを知ります。この別離は、主人公が自殺に至るまでの沈黙によって強調されています。青年の死は、人々の間のコミュニケーションが不可能であること、タブーと秘密の重圧、言えない事柄を垣間見せます。Laurent MAUVIGNIER の処女作、『Loin d'eux』は、言葉に頼ることなく、破壊的な秘密を扱うことで繊細な領域に触れる、心理小説の傑作です。」
他のリスト(これとかこれとか)にある本とか、フランス人の友人からおすすめされた作家とか、読みたい本がたくさんあって嬉しい。
【フランス大学院留学】パリ政治学院の推薦状
2021年度入学のパリ政治学院 公共政策修士1年コース(MPA:Master in Public Affairs)出願にあたって、推薦状を誰にお願いしたか、どのようなスケジュール感で進めたか、実際にどのようなフォーマットの推薦状が求められたのかの記録です。
1.推薦者選び
パリ政治学院MPAで必要な推薦状はProfessional2通。職場の(元)上司2名にお願いした。周りに聞くと、肩書重視でなるべく役職が高い人にお願いした、というケースもあったが(もちろん実際に上の役職の人と密に仕事をしていた場合もあるのだろうけど、私は関わりがなかったので)、課長クラスの近い関係の方にお願いした。誰にお願いするか決めるにあたって考慮したのは以下3点。
(1)Personal Statementで触れている
Personal Statementで大きなトピックとして取り上げている業務に携わっていた際の上司であること。Personal Statementと推薦状は、それぞれ異なる側面から出願者を表現する対となる書類。Personal Statementでアピールした長所や能力について、推薦状が裏付けとなり、あるいは違う角度から補強してくれたりする。なのでPersonal Statementで大きく取り上げた業務のときの上司というのは必須条件。
(2)推薦状をご自身で書いてくれる
Personal Statement、推薦状、そして履歴書などすべてを自分で書いてしまうと、どうしても視野が狭くなってしまうし、表現も偏ってくるため、少なくとも2通のうち1通は一からご自身で書いてくれる方にお願いするようにした。
結果はやはり、上司ならではの視点でエピソードを選び、その人ならではの表現の推薦状を作っていただけたので、これも上記1に負けず劣らず重要。むしろPersonal Statementを書く時から、この人に推薦状をお願いしたい!というのを前提にエピソードの取捨選択をしていた。
(3)アカウント作成などの作業をお願いできる
昔は推薦状といえば紙での提出で、なんとなれば出願者が作成した推薦状にサインだけしてもらう、ということもあったと思う(もちろん望ましくないことだけど)。
今は、出願者が推薦者の情報(名前、所属、メールアドレス等)を大学の入試用プラットフォームに登録すると、大学側が推薦者に直接依頼メールを送り、推薦者が自身でアカウントを作成して推薦状をオンラインで登録・・という流れが一般的になっている。こういった一連の作業をしてもらえる人、というのは大事なポイント。役職が高すぎる人にお願いすると、こういった作業をいちいちしていただくことが難しくなる。
2.執筆依頼、確認
10月末、出願先決定後、推薦状を依頼したい旨の頭出し。
11月半ば~12月 出願先大学院の概要(wikipediaの該当ページ)、Personal Statement(未確定版)を添えて、何日までに提出いただきたいかなどのスケジュール感とともに依頼。必要に応じて推薦状の下書きも添える。下で詳しく述べるように、パリ政治学院の推薦状の記入欄は複数に分かれているので注意。
12月 推薦者から、推薦状案の確認と、英語のネイティブチェックにかけてほしいとの連絡を受ける。私が確認したのは主に固有名詞(出願先の学校名や専攻等)。また、しばらく海外の大学事情から遠ざかっている方だと、少し昔の書き方(出願者を"Mr./Ms. 名前→姓"で言及したり。今は日本人なら"姓→名"が一般的かと。)があったりしたので、そのあたりの確認もした。
3.推薦状提出
パリ政治学院MPAは、12月20日の一次締め切りまでに出願を完了すると2月25日までに合否を通知してくれるというスケジュール。なので、12月20日までの提出をお願いしていて、12月半ばまでには2名の推薦者どちらからも提出いただいた。
実際にどのような形で推薦者への依頼が届くのか、推薦者が教えてくれたので記録。推薦状本文には文字制限がない。
0 出願者がオンライン出願フォームに推薦者の情報(氏名、所属、役職、電話番号、メールアドレス等)を登録。
1 大学から、登録した推薦者のアドレス宛に、推薦依頼があること、推薦してもいいならアカウントを作成するよう依頼するメールが届く。
2 推薦者がアカウントを作成。
3 作成したアカウントから、以下の質問にそれぞれ答えていく形で推薦状を登録。一時保存は可能だけど、一度Sendボタンをクリックすると修正できないので注意。
- In what context do you know the candidate? Do not exceed 2000 characters.
- How long has the candidate worked for you? Do not exceed 2000 characters.
- What were the tasks assigned to him/her? In what department? Do not exceed 2000 characters.
- How would you rate the applicant in comparison to your other interns/employees?※以下の選択肢から選ぶ。
Excellent / Very good / Good / Weak / Do not know / Not relevant
- Please write your recommendation letter below (you can copy and paste from a Word document). You may want to tell us about the applicant’s personality, character and potential.
⑤推薦者、出願者双方に推薦状提出完了メールが届く。
推薦状依頼から提出までの流れは以上。推薦状の書き方については、すでに本でもオンラインでも星の数ほど溢れているけど、以下、推薦状の例。
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渡仏6週目の覚書 日本人留学生との交流、発表課題1つ目
渡仏6週目、9月20日-26日
雷雨直前の暗い空。
同じコースに通っている日本人から、大学の1年上にも日本人がいるのでその家族と一緒に夜ご飯でもいかが、というお誘いをいただき、渡仏後初の外食。連れて行ってもらったレストランは、一見すると間口も狭く人も入っていないようだが、お店を通り抜けたところに広がる中庭はたくさんのお客さんで賑わっていて、とても楽しい時間を過ごした。
金曜は少人数授業の担当回だった。20世紀フランスの歴史の授業で、事前に参考資料といくつかの質問が配布され、参加者はA4三、四枚くらいで回答を作成。授業当日は、事前に決めた担当者がメインになって、質問に回答していく形で進められる、というもの。初回の担当をすることにしたので進行方法など不安だったけど、実際は先生が進行役と詳しい解説をしてくれたので、生徒が主体になることはなく。準備した範囲内であらかた対応できたので一安心。
金曜の授業に向けて、月曜からかなり時間をかけて準備していたので、週末はぼんやりとしていた。土曜日、日本人から教えてもらったナチュラルワインショップに行ってみる。日本でPierre FrickのPinot blancを飲んで好きだったと伝えたら、同じアルザスの白をおすすめしてくれたので、時間をかけて飲んだ。
Frederic Gechockt Grand cru Kaefferkopf 2016 確かに芳醇複雑な味わいがPierre Frickと似ている。抜栓したてで温度が低いと少し棘があるようにも感じたけど、好み。
日曜は、前日に買っておいた煮込み用牛肉と赤ワインでブッフ・ブルギニョンを作った。ワインをしっかり煮詰めると酸味が消えて濃厚になり美味しい。
この週末でワクチン2回目接種から2週間が経過したので、晴れて自由の身。カフェにも美術館にも行けるし、旅行もできる。しかし、これまでの何週間かですっかり、平日は学校(授業に出るか図書館に籠る)、週末は読書と掃除洗濯、料理に散歩のリズムが出来上がってしまったので、意識しないと外出を挟む隙がない。
渡仏5週目の覚書 フランスでの自炊 角煮ラーメン坦々麺
学校が始まって2週目に入り、久々の学生生活にも少しずつ慣れて、毎日の食に気を配る余裕が出てきた。
これまではズッキーニや茄子を買ってきてオリーブオイルと塩胡椒でさっと炒める、パスタやクスクスを用意する、買ってきたお惣菜やシャルキュトリーを並べる、という感じ。それでも十分美味しくて満足なんだけど、時間をかけて料理をすることそのものが好きなので、スーパーや市場、お肉屋さんを眺めてはどれで何を作ったら楽しいか・・と考えていた。
で、Monoprixというスーパーで見つけたのがプライベートブランドの中華麺。
なんとお値段わずか1.65€。人気なのか品切れしていることも多い。物は試しとばかりにラーメンを作ってみることにした。こちらで簡単に入手できる食材・調味料でどんなラーメンが作れるか、これってゲームみたい。
まずはラーメンの下準備として、豚のスペアリブが安かったので角煮を作る。味玉とマスタードを添えて。
そして豚肉を下茹でしたときに出たラードを使ってシンプルなラーメンスープ。鶏がらスープをイメージしたチキンブイヨンをベースに、角煮の漬け汁をかえしとして注ぎ、ラーメンっぽいコクを出すためにネギ生姜ニンニクをラードで炒めてトッピング。チャーシューの代わりに生ハムを乗せて、カイエンヌペッパーを一振りして出来上がり。
あっさり目だけど十分美味しい。ただ、麺がごわついた食感であまり美味しくないのが難点。
麺の欠点をカバーしようと、濃厚スープの坦々麺を試してみることに。豚ひき肉はないので、ひき肉ステーキとして売られている牛ひき肉でネギ肉味噌を作成。味付けはコチュジャンと豆板醤(アジア食材店で購入)、ニンニク、生姜。スープはラクサペースト(こちらもアジア食材店で購入)に練りごまとピーナッツペーストを入れて豆乳で伸ばし、チキンブイヨン少々で完成。トッピングは赤玉ねぎとフライドオニオンにセロリ。
スープの粘度が高くなりすぎてしまった。麺は、長めに茹でてスープを絡めて食べるとゴワゴワ感があまり気にならない。ただ、麺の存在感が無くなるので、パスタでもなんでも同じでは…?という気持ちになる。
週末の読書はLydie Salvayre "La déclaration"。
渡仏4週目の覚書 エクス・アン・プロヴァンス政治学院の始まり
渡仏4週目、9月3日からエクス・アン・プロヴァンス政治学院での授業が始まった。
私はCEPというコースに登録しているので、各学期セミナー2コマと講義5コマを履修する必要がある。セミナーは毎回の出席を重視するタイプの授業で、人数制限もあり、先週の段階ですでにどの授業を履修するか決定済み。
問題は、大教室で行われる講義。留学生向けにフランス語で行われる講義が3コマあるのでそれは履修するとして、残り2コマをどうするか。留学生向けの英語の講義(しかも単位が楽に取れるとの評判)もあるが、それではフランス語の勉強にならないので、現地学生と共通の講義を色々とみてみた。いかにもフランス、資料配布はなくパワポもほとんど使わず、先生はひたすら話し、生徒はそれを書き取っていくという講義ばかりで、1日に2コマ(4時間)の講義を受けてみたらぐったり… それでいて大した内容は書き留められていない。
月曜14時「地中海の地政学」、火曜16時「サイバーセキュリティ」、水曜朝8時「国際関係の歴史」、水曜16時「デジタル情報の課題」。どれを履修登録するかは未定。
水曜朝「国際関係の歴史」で隣に座った子がたまたま日本語を勉強していて来年は1年間日本に留学予定とのこと、NARUTOが好きで、第二次世界大戦前のドイツについて先生が話しているときに、突然「ドイツってUCHIHAみたいだよね」と内緒話されて笑ってしまった。
週末、ようやく2回目のワクチン接種。接種直後から解熱鎮痛剤を飲み続けていたおかげか、副反応は軽い腕の痛みのみ。
日曜は、地域のクラブや団体を紹介するイベントが街をあげて催されていた。主要な広場や大通りに団体のブースが並んでいる。日本関係だと日仏文化交流団体、合気道、空手、あと心強武道というものを発見。日仏文化交流団体は迷ったけど、日常会話の力を伸ばすことや地域の人との交流は優先事項が低いので見送り。友人によると15ユーロの入会金で、日本語の授業や、ピクニックや持ち寄りパーティーなどしているらしい。学生以外の現地の知り合い(しかも新日!)を作れるのはいいよね。
毎週末フランス語の本を一冊読む、を自分の課題にしてみた。平日に持ち越すと、授業優先になったり読み飽きたりしてしまうので、わからない単語は飛ばしてもいいからとにかく週末で読み切ること、辛い時は漫画でもOK、とハードルを下げておく。1冊目はクセジュ文庫の「第五共和政 La Cinquième République」。